遺体-震災、津波の果てに (著)石井 光太 感想

震災から6年ということで、ようやくこの本のページをめくることができました。購入したのは随分前だったんですけど、まだ開いてはいけない気がして。気持ちにけじめをつけるために、2017年3月11日から読み始めました。東日本大震災で津波に襲われた釜石市のドキュメンタリーです。内容は人名救助ではありません。遺体回収の記録です。釜石市に開業している歯科医、内科医、釜石市役所の職員、消防団員、自衛隊員、様々な立場の人たちが、震災から釜石に集まり、遺体回収の任に当たるまでの経緯が詳しく記されています。印象的だったのが、書籍内でお話しになられている皆さんは「生き残った人たち」で、多くの人が津波を目撃しないまま、津波が沿岸に「来たそうだ」大きな被害が「出たそうだ」多数の遺体がまだ回収「されていないそうだ」程度の情報しかないままに、その職務に当てられ、釜石の現状を目の当たりにした、ということです。消防団員の中で「目の前で親戚が飲まれていった」というかたもいらっしゃいましたが、津波を目撃した人のほとんどが亡くなり、生き残った人たちが遺体を弔う役割を果たさざるをえなかった、というギリギリの状況に衝撃を受けました。昨日まで同じ町で生活していた者同士です。遺体の傷ましい描写に思わず目を塞ぎたくなる場面もありました。どれもテレビでは報道されないお話しばかりでした。読み終わったあと、自然と本に向かって手を合わせていました。それまで遺体を触ったことすらなかった人たちが、とても大切に、精神の限界まで、骨の一本、歯の一本まで家族のもとに返そうとしていた姿に、私も自然と手を合わせていました。テレビには映らなかった3月11日から始まる闘いがそこにはありました。