北斗 ある殺人者の回心 (著)石田衣良 感想

まず、タイトルが殺人鬼ではなく殺人者となっているところから、猟奇的な殺人の話ではないのは想像できました。池袋ウェストゲートパークなど有名な小説を書かれている石田衣良さんの本です。両親に虐待されて育ち、愛を知らない少年の話でした。主人公の北斗の両親は、愛を表現するのが難しい人でした。北斗の父は妻にも暴力を振るう人間で、エリートだった若い頃から転々と色を変えてどんどん堕ちていきます。両親は気に入らないことがあればしつけと称して北斗を殴ったり、寒空の中ベランダに締め出したり、想像するのも辛いような虐待を受けて育ちました。ある時、父の死をきっかけに北斗は母と二人暮らしになります。しかし、母は暴力に依存していて北斗を父がわりにしようとしました。北斗は自ら児童施設に保護されます。その後、北斗は里親に引き取られることになります。北斗を引き取った里親は北斗の前にも何人か里子を引き受け、社会に出してきて立派な人でした。北斗はそこで生まれて初めて、愛を知ります。愛を知った北斗は、最初こそ拒んでいたものの徐々に心を開き、里親と幸せな日々を過ごします。しかし、北斗の幸せは長くは続きませんでした。里親は癌に侵されており、余命もいくばくかという状態だったのです。ひょんなことから、北斗と里親は「癌が治る」「引きこもりが治る」という触れ込みの水を手に入れます。水はとても高額で、里親が残してくれていた貯金をどんどん食いつぶします。北斗はその水の効果には懐疑的でしたが、里親が喜ぶならと購入し続けました。しかし、その水はやはり詐欺でした。北斗はその事実を隠し続けますが、知人から知らされてしまいます。絶望のまま里親は亡くなり、北斗は水を販売していた研究所の責任者の殺害を計画します。しかし、結局責任者は殺せず、そこで働いていた罪のない女性を2人も殺してしまいます。その裁判の模様を主に描いた小説でした。この本を読んで、裁判の詳細な描写に驚きました。裁判とは、被害者・加害者ひとりひとりの人生に綿密に向き合って行われているものだと知りました。