世界音痴 (著)穂村弘 感想

読み終わった後の感想はまず何よりも、驚きでした。
日常生活の中で感じる生きづらさ、世間とのズレ、でもそれぞれが小さいものだから、いつもは気にしないように努めていた自分と世界とのギャップを、こんなに的確に文章に落とし込むことができる人がいるのか、という驚きです。
ふとした会話の中で自分の長年にわたる勘違いが露呈した瞬間、飲み会の席で他の人たちのように上手く席移動や会話ができない自分、など自分以外は誰もそんなことで悩んでいないのでは、落ち込んでいないのでは、と思うような事柄を拾い上げてエッセイを書かれています。
自分の他にも同じことを考えている人がいるんだ、しかもそれが1冊の本になって出版されているんだ、とわかった時、驚きとともに何か後ろ盾が得られたような心強さも感じました。

この本には短編のエッセイが多数収録されています。
それぞれが読みやすく、ユーモラスに、時に空想の世界の出来事のように書かれているので、楽しんで読むことができると思います。
でも、内容に共感できる人にとっては楽しい・嬉しいだけでなく、時に痛々しいほどの共感が襲ってきます。
その共感がまさに、自分が世間とズレていることの証明、「世界音痴」であることの証明なのだと思います。
この本を読み終わった後に、他の人の感想をネットで検索してみたところ、「可笑しい」「なんだか可愛い」といった感想が並んでいて、また驚きました。
このエッセイを他人事として読むことができたら、「可笑しい」エッセイなのだと思います。
でも私には、到底「可笑しい」とは思えない、世界音痴の心の叫びが書かれているように思いました。